プロジェクトマネージャー 過去問解説【令和2年 午後1】

総評

問1DX推進に関する題材です。全社横断のプロジェクトを推進する際の協力体制の確立や、IT部門としての携わり方について問われています。問題文を注意深く読めば、比較的解きやすい問題だと思います。
問2システム開発におけるチームビルディングが題材です。リーダーによる詳細な指示の下で活動していたメンバをどのように成長させていくか、という部下育成の観点でのプロジェクトマネージャスキルが問われる問題でした。同じような経験があれば比較的解きやすかったのではないかと思います。難易度は普通です。
問3SaaSを利用したビジネス課題の迅速な解決が題材です。プロジェクトも目的やコミュニケーションツール導入による変化点への対応など、問題文からしっかりと情報を抽出し解答していく必要があります。問題文から読み取って解答できるという点では難易度は比較的解きやすかったのではないかと思います。

IPAの過去問はこちらから参照ください。

令和2年度10月試験 問題冊子・解答例・採点講評・配点割合(PDF)

目次

問1 デジタルトランスフォーメーション推進

設問1 [K課長の提案]の位置プロジェクト憲章の作成について(1),(2)に答えよ

(1)K課長がCDOから全社に向けて、自動化プロジェクトのプロジェクト憲章を発表することを提案した狙いは何か。30字以内で述べよ

解答

プロジェクトの承認を全社に伝え協力体制を確立するため

解説

プロジェクト活動と現行業務を兼務することはよくある話で、そこで課題となるのが「プロジェクト活動への工数の割り当て・優先度」です。現場の担当者は現行業務(目の前の課題)に対し責任を負っており、プロジェクト活動(将来的な活動)が蔑ろになりがちです。

[L工場のヒアリング]の内容を確認すると、同様のことが起きており

工場長からは、現業をおろそかにしないようにとの注意があり、限られた時間の中で活動している。

とのコメントがあり、プロジェクト活動に対する理解得られ切れていないことがわかります。

また、ITSでは

全社的な重要案件は優先して対応することにしている

にもかかわらず

DX検討チームの活動については、ITSとして依頼を受けておらず、状況はわからない

ということで、うまくITS部門を巻き込めていないことが分かります。

そこでK課長は、プロジェクト憲章を発表することで、プロジェクト憲章の目的である「本プロジェクトが正式に承認されたものであること」「プロジェクトの定義」を共有し、関係者の協力体制を確立することを目指しました。

(2) K 課長が,プロジェクトの背景に明記することを提案した、ある重要な決定事項とは何か。35 字以内で述べよ。

解答

役員会で工場の生産プロセスDXを今期の最優先案件としたこと

解説

このプロジェクトが社内でどのように位置づけられているのかを明記する必要があります。ITS部へのヒアリングでもありましたね。

全社的な重要案件は優先して対応することにしている

社内での位置づけを明記し、優先して取り組んで頂く必要があります。

設問2 [K 課長の提案]の②プロジェクトチームの編成について, (1)~(3)に答えよ。

(1)K課長が,CDOの直下にプロジェクトチームを設置することを提案した狙いは何か。30字以内で述べよ。

解答

全社からプロジェクトへ参加できる体制とするため

解説

CDO直下にプロジェクトチームを設置する狙いは主に「指揮命令系統をプロジェクト責任者とし、現行業務と切り分ける」ことです。こうすうすることで、各部署の垣根を越えてCDO直下に集まったプロジェクトチームをプロジェクトに優先的に対応させることができます。

この体制がないと、組織間ごとに都度調整が必要になり、L工場のITSのように『依頼を受けていないので対応していない』という状況になります。

(2)K課長が,DX検討チームのメンバを専任とすることを提案した狙いは何か。35字以内で述べよ。

解答

メンバが最適化の案を検討する時間を確保できるようにするため

解説

DX検討チームの課題はL工場の工場長へのヒアリングで色々と出てきています。

工場長からは、現業をおろそかにしないようにとの注意があり、限られた時間の中で活動している。

ITの活用に慣れていないので、習得に時間がかかっている

コスト削減効果の高い生産プロセスの最適化の案を検討する段階に進むことができず、進捗が遅れている

このように、『時間が確保できていない』ことが現在の課題です。そこで時間が確保できるようにプロジェクト選任にすることで解消します。

余談ですが、、現実でもよくある話なのですが、専任とされ人が取られると現場業務が忙しくなることはあきらかなので

L工場の工場長やM主任のフォローをしっかりしておくことも重要です。

(3)K課長が、N工場からもメンバを選任することを提案した狙いは何か。30字以内で述べよ。

解答

来季からの横展開に必要な手順を習得してもらうため

解説

まずN工場の記載がどこにあったかを探してみると、[G社のIT組織]の直前まで遡ります。

~全国の向上へ順次展開する。その第一弾として、L工場と製品構成が類似しているN工場に導入する計画になっている。

そしてN工場に関してはこれ以外の記述はありませんので、この記載を基に解答を組み立てます。

順次展開していく第一弾の工場の担当者に参画してもらう理由は、『展開をスムーズに行えるようにするため』と考えられます。

設問3 [K課長の提案]の3自動化プロジェクトの進め方について,(1),(2)に答えよ。

(1)K課長が,IT統括部のメンバがDX検討システムを使用したデータの収集,データの分析・評価及び生産プロセスの最適化の案の検討を支援することを提案した狙いは何か。35字以内で述べよ。

解答

ITとプロセス分析の専門家の支援で進捗の遅れを回復するため

解説

DX検討システムの進捗遅れについては、L工場へのヒアリングで記載されています。

DX検討システムを利用してデータを収集し、そのデータの分析・評価を行う方法の説明をベンダから受けているが,DX検討チームのメンバはITの活用に慣れていないので、習得するのに時間が掛かっている。その結果,データを分析し,評価して,コスト削減効果の高い生産プロセスの最適化の案を検討する段階に進むことができず,進捗が遅れている。

「ITに慣れていない」という記述から、ITに詳しいメンバの支援が必要であることが分かります。ITについては、現在はうまく参画できていないIT統括部が担えます。

IT統括部は、[G社のIT組織]に記載のある通り

システム化全体計画の作成、業務プロセスや生産プロセスの分析、システムから開発までを一括して行っている。

ということでプロセス分析の専門家であることもわかるので、IT統括部による支援によって進捗の遅れを挽回できそうです。

(2)K課長が,運転支援ソフトウェアパッケージによる自動運転のためのパラメタの設定値の変更及びAIに学習させる作業は,外部ベンダの協力を得てITSメンバが行い、来期の本番運用ではITSメンバだけで行えるよう技術習得を行うことを提案した狙いは何か。35字以内で述べよ。

解答

システムが異常の際は自分たちで迅速に対応できるようにするため

解説

これは少し難しいのでテクニック的な解き方をします。

問題の「ITSメンバだけで行えるよう」という部分に着目し、ITSメンバだけで出来なければならないものを問題文中から注意深く探します。

すると、L工場のITS部長からのヒアリングで下記の記述があります。

工場のシステムは製品の生産に直結しているものが多く、システムに異常が発生した場合には、自分たちで迅速に復旧できる技術を身に着けておく必要がある

この内容を解答として利用します。

問2 システム開発プロジェクトにおけるプロジェクトチーム開発

設問1 [Q課長の観察]について,(1),(2)に答えよ。

(1)Q課長が認識している本文中の下線1の顧客の視点から捉えた広義の生産性とは,どのようなものか。“アに対するイの大きさ”と表現するとき,ア、イに入れる適切な字句を答えよ。

解答

時間を含めた投下資源
サービスの提供価値

解説

問題文にある『顧客の視点から捉えた』に着目します。

顧客が生産性や費用対効果について言及している文言を注意深く探すと、第二段落冒頭に記載があります。

ビジネス環境が目まぐるしく変化している。この状況に適応するために,もっと迅速にサービスを改善して, 時間を含めた投下資源に対して十分な価値を提供できるようにしたい

この記載内容を用いて解答します。


(2)Q課長は、本文中の下線2で,肯定や否定の考えを感じさせないように気をつけることで,どのようなヒアリング結果を得ようと考えたのか。30字以内で述べよ。

解答

PMの考えに引きずられないメンバの真の考え

解説

問題文中にヒントはありませんが、基本的なスキルです。

対人相手にヒアリングする際には、自分の主義主張を感じさせないようにしないと、相手も気付かぬうちに誘導されてしまうことがあります。

設問2 [メンバへのヒアリング]について,(1),(2)に答えよ。

(1)Q課長が,本文中の下線3で“学び続けながら”,“成長し続ける”という方針を示したのは,E社PTをどのような期待に応えるプロジェクトチームにするためか。25字以内で述べよ。

解答

提供価値を継続的に高めるという期待

解説

まず、「誰からの期待か」を考えます。E社PTへの何らかの期待を示しているのは、E社とQ課長です。

E社の期待は[Q課長の観測]の冒頭に記載があります。

E社のサービスの提供価値を継続的かつ迅速に高めていくという期待に応えるのは

と記載がありますので、これがE社PTに対する期待です。


(2)Q課長が,E社PTの行動の基本原則について,全員で議論して合意し,明文化して共有することにしたのは,どのような意図からか。全員で議論して合意することにした意図と,明文化して共有することにした意図を,それぞれ30字以内で述べよ。

解答

合意することにした意図メンバ全員が納得して行動に移れるようにするため
明文化して共有することにした意図メンバ全員が自律的に行動するための基準となるため

解説

全員で議論することは『全員で議論して答えを出した』という結果を導くための大事なプロセスです。自分たちで答えを出すことにより、結果に納得して行動に移れるようになります。

設問3 [ミーティングでの議論]について,(1)~(4)に答えよ。

(1)本文中の下線の重要なステークホルダとは誰か,答えよ。

解答

消費者

解説

ステークホルダーとは、組織が行う活動によって影響を受ける利害関係者を指す言葉です。例えば、株主・従業員・顧客・協力会社・消費者などが該当します。

『E社』が解答候補して上がってくるかもしれませんが、最終的に価値を提供しているのは『顧客』です。目先の相手ではなくプロジェクト全体の最終的な目的を認識しておきましょう。

(2)本文中の下線⑤の課題とは,どのような課題か。15字以内で答えよ。

解答

ST間の稼働の不均衡

解説

下線⑤の文章の続きを読むと『ST間での役割分担を、プロジェクトの途中でも必要に応じて見直す』と記載されておりますので、役割分担を見直すことで解消できる課題となります。

役割分担に関する課題は[Q課長の観察]に記載があり、P.9冒頭に『役割分担にこだわりすぎる面もあり、ST間の稼働が不均衡になることがある』と具体的な課題の記載があります。

(3)本文中のaに入れる,ST間で行うことを,15字以内で答えよ。

解答

メンバのローテーション

解説

役割の固定化を解消するだけでなく、改善のアイデアを得ることも目的とする必要があります。

これは仕様管理・検証担当と改善担当でローテーションし、例えば改善担当が上流工程の仕様管理を行うなど違った視点で業務を行えば、改善のアイデアが得られる可能性があります。


(4)本文中の下線⑥について,どのような方法で対応するのか,30字以内で述べよ。

解答

自律的な判断と行動を尊重して、学びの機会を与える

解説

[Q課長の観測]P.8後半部分では、ST内のメンバに細かい指示を行いメンバも指示待ち傾向にあることが記載されていました。これはタックマンモデルでいう『形成期』の状態ですね。チーム立ち上げ後時間が経っているようなので、チームができたばかりではありませんが。

ここから、チームとして機能している状態である『機能期』を目指します。P.8後半部分とまったく逆の方法で対応していく訳ですね。

タックマンモデル

形成期
 チームが出来たばかりで、メンバーは互いのことをよく知りません。メンバー同士がまだ本音を隠しており、緊張感を持っている状態です。チーム全員が同じ価値観を持っているのかどうかも分からない状況です。
この段階のリーダーは、メンバー全員に、チーム結成の主旨や活動目的、目標を説明し、明確な指示を出して仕事を進めていく必要があります
混乱期
 チームで仕事が始まったばかりの段階では、メンバー同士で主張が異なり、意見がぶつかり合います。各メンバーの意識や関心は、チームの目的や目標に向かうのではなく、互いの行動や考え方に向いている状況です。各自の行動や役割と責任などについて、対立が生まれる状態です。
統一期
 混乱期を経て各メンバーが自分の仕事がうまくいくようになると、メンバー同士がオープンになり、互いの行動や思考の特性を容認するようになります。チームとしての目標を共有しながら、一定のルールの下でまとまってきます。他のメンバーやチーム全体のことを気に掛けるようになり、チーム内の関係が安定して、チームワークが生まれてきます。
機能期
 リーダーの指示がなくても、メンバーは自律した行動が取れるようになります。これまでの成功体験が生かされ、チームとしての成果も出るようになります。チームに一体感が生まれ、チームの力が目標達成に向けられる段階です。
散会期
時間的な制約や状況変化、目標の達成によって、メンバー間の相互関係を終結させる段階になります。

問3 Saasを利用した人材管理システム導入プロジェクト

設問1[A社のSaaSの利用方法]について,(1)~(3)に答えよ。

(1)効果の創出が期待できる標準機能を中心に選択し、カスタマイズを最小化して人材管理システムを導入することは,費用対効果を高めることに加え,第1段階でのどのようなリスクの軽減に寄与するとS課長は考えたか。30字以内で述べよ。

解答

人材管理システムの稼働が来年4月から遅延するリスク

解説

プロジェクト管理はQCDを中心に考えます。

問題文で言及されているのはQ(quarity:品質)、C(cost:費用)、D(delivery:納期)のうち、Dの納期のみです。納期は[人材管理システムの導入計画]に記載の通り

来年4月は必ず稼働させる。

という強い意思表示がありますので、納期優先であることがうかがえます。

(2)S課長が,標準データ項目仕様に従ってA社のSaaSに現データを移行又は新規登録して,人材管理システムの人材情報データを整備することにした狙いは何か。30字以内で述べよ。

解答

拡張・改善される標準機能を利用し続けるため

解説

S課長が人材情報を整備したことはP.14の中盤に記載があります。直前には下記の通り記載されています。

表計算ソフトで管理している各社員の人材情報データの多くは標準データ項目仕様と異なる。

それでも、S課長が『標準データ項目仕様に従って』人材情報データを整備した理由が解答になります。標準データ項目仕様に従う理由としては[A社のSaas利用方法]に記載の通り『カスタマイズを最小化し』『拡張・改善される標準機能を利用し続ける事』が重要と考えられているためです。

(3)S課長が,キャリア形成機能を第1段階から部分的に利用し,毎年の業務経験に関するデータを蓄積することにした狙いは何か。35字以内で述べよ。

解答

第2段階で経年情報をつかってキャリア形成の可視化を行うため

解説

キャリア形成の推進を目的としているのは[人材管理システムの導入計画]では『第2段階』の3年半後と記載があります。しかしこれは「目標が達成している状態」ですので、目標達成に向けたデータの蓄積は事前に行っておく必要があります。

設問2 [プロジェクト体制及び要件定義の作業方法]について,(1),(2)に答えよ。

(1)S課長は、人事評価を行う立場の利用者が自らの立場を踏まえて,第1段階の業務プロセスの定義に主体的に取り組むことが重要であると考えたが,各部の部長及び課長の代表者にはどのような役割を果たすことを期待してプロジェクトのメンバとして選任することにしたのか。30字以内で述べよ。

解答

人事評価業務の運用ができるかどうかを確認する役割

人事管理システムに対する利用者要求事項を提示する役割

解説

利用者の立場でプロジェクトに取り組んでもうらう理由は主に2点です。

  • 現行業務が実現可能かを確認する
  • 課題や追加要件を挙げる

このどちらかをベースに解答を記載すればOKです。


(2)S課長は、メンバが標準機能のままでも多様な業務プロセスが実現できることを理解することで,どのような効果を狙えると考えたか。35字以内で述べよ。

解答

利用者要求事項の大部分を標準機能で実現できる範囲に収める効果

解説

P.15冒頭にほとんど答えが書いておりますが、S課長は『カスタマイズを最小化するために利用者要求事項の大部分を標準機能で実現できる範囲に収めたい』と考えております。これは第一段階の納期や今後の利用方針によるものです。

このS課長の考えを実現するための方法が『標準機能のままでも多様な業務プロセスが実現できることをメンバに理解させることにした』に繋がります。

設問3 会議におけるコミュニケーション方法】について,(1),(2)に答えよ。

(1)表2中の下線1に示したように,会議主催者が議事録を閲覧していないメンバに閲覧を促すプッシュ通知をすることによって,どのようなリスクを軽減できるか。25字以内で述べよ。

解答

認識齟齬のまま進み手戻りが生じるリスク

解説

[会議におけるコミュニケーション方法]の冒頭に従来のプロジェクトでの課題が記載されています。議事録を閲覧していないと、同じように課題が発生するリスクがありますので、そのまま解答に利用します。

(2)S課長は,なぜチャットルームのログを要件定義の作業の成果物に追加することにしたのか。その理由を25字以内で述べよ。

解答

討論結果の根拠となる意見の記載があるから

解説

会議のみが討論の場であれば、会議議事録のみが要件定義の成果物として追加されます。ただし今回はビジネスチャットを利用して、欠席者からの意見や議事録に対する意見を投稿することにしておりますので、決定事項の根拠としてビジネスチャットのログが必要になります。

総括

令和2年のプロジェクトマネージャ試験は問題ごとの難易度はそこまで大きくなく、平均的な難易度であったように思われます。題材についてもDXやSaaSの利用など、最近の実際のプロジェクトとして取り組んでいることが多いと思われる内容が挙げられているので、解きやすかったのではないかと思います。

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